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翌日の放課後。
「じゃーん! 先生、持ってきたぜ!」
たった一日でよくもこれほど……というくらい、門脇は昨日とは打って変わって、なんとも少年らしい無邪気な、そして勝ち気な笑顔を見せて理科室にやってきた。
昨日までの人を寄せ付けない凄惨な凄みは消えていた。
おそらく、これが本来の門脇の表情なのだろう。
大人や教師を信用せず、友達さえいらないという彼の孤独の殻は、これまでの自己防衛で身につけた処世術ではないだろうか。
その右手にはタッパー。
中身は、知己との勝負の為の味付けたまご。
「俺、自信あるぜ。これ、オヤジにも食べてもらったんだ」
嬉しそうにタッパーの蓋を開けた。
「親父さん……?」
思いも寄らない人物の名前が出て、知己は尋ねた。
「アレ? 先生、知らないの? 俺んち、父子家庭。 母さんは、親父が仕事ばっかでほとんど家に寄りつかねえから、愛想尽かして出て行ったんだ」
「え……」
いきなり聞かされる門脇の家庭環境に驚く。
(そんな事、落合先生も誰も言ってなかったぞ。……そうか。だから、こいつ、大人を信用できないんだな……)
急な話に少し戸惑った知己だが、
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