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(でも、同情はしちゃいけないよな。それこそ、こいつに失礼だ)
色々な人生がある。
何がいいとか悪いとか、比べようなどできない。
「たまたま親父が家に居て、朝、飯の時に昨日作ったこれを食べてもらったんだ。美味いって言ってくれた」
(ああ。門脇の笑顔の原因は、父親の言葉かもしれないな……)
知己はそう思いつつ、知己も用意していたタッパーの蓋を開けた。
「先生の言いたいのは、アレだろ? ゆで卵の半熟に秘密があるって事だろ? 偏差値84の俺への挑戦状にしては、陳腐だったよな」
門脇が不敵な笑みを浮かべて言う。
「俺、ちゃんと知ってるんだぜ。白身と黄身の固まる温度には違いがあるって……」
(なるほど)
それをきちんと分かってて……つまりは自分に勝算ありと思って、昨日は渋々承知したのだとしたら、この門脇という少年。
わずか16歳にして相当な食わせ者だ。
不利にみせかけて、ちゃんと計算高く生きている。
(それもこいつの処世術なんだろうな……)
と、知己は思わないでもない。
16歳にて、この駆け引きの巧妙さを身につけたとしたのなら、それまでの彼の生き方に寄る所と判断される。
「それだけじゃない」
門脇は言葉を続ける。
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