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「どろどろだ……」
最初に声を発したのは、将之の方だった。
将之は、ほとんど脱いでいない。
知己に無意識に掴まれたYシャツの部分は、多少皺が寄っている。
ネクタイも半ばほどけた状態ではあったが、スラックスも下着も少し下げた状態といったところか。
ただ、飛び散った二人の白い液体がぬめぬめと将之の下腹部と、まくり上げられた知己の上半身に飛び散って汚していた。
「……そこの流し場で洗え。湯沸かし器の電源入れて、暫く待ったら湯が出る。タオルはロッカーの中だ」
恥ずかしさの為か。
それとも心まで将之を受け入れた訳ではないという意志の表れか、知己は目を合わさず、将之に言った。
「……私物も時には有効ですね」
そう言って、将之はにやりと笑った。
どこか無邪気ないたずらっ子を思わせる。
見る者の心を掴まずにはおかない魅力的な将之の笑顔である。
「私物の良さが分かったか? 四角四面なお役人さんにも」
嫌みを込めて、知己が言う。
「そうですね」
と将之は、全く気持ちの籠ってない相槌を打って、知己のロッカーを開けた。
(くそ。どうして、こんな奴に親切にタオルを貸すんだ? 俺は)
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