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(いや、待てよ。こいつ「想像していた」とか言ったぞ。ということは……!)
恐ろしい想像が知己の頭をよぎった。
「ちょっと待て。つまり、この八年間、俺はおまえのおかずだったのか?」
「はい! 最高でしたよ。想像でも」
明るい将之の言葉に、知己はちょっと所ではない寒気に襲われた。
おかず。
つまり夜のお供。
マスターベーション時の妄想のお相手。
(か、勘弁してくれ……)
知己が目眩に倒れそうになっているのを堪えていると
「先輩、メルアドと携帯の番号を教えてください」
と、悪びれもせずに……いや、おそらく本当に悪いなどとは露ほどにも思っていないのだろう……将之が言った。
「あ?! 何言ってるんだ。もう、いいだろ? さっき、『私物も有効』ってお前、言ったじゃないか!」
知己は、将之との関係は一度きりのつもりだった。
引きずる気は毛頭ない。
「何、言っているんですか? 私物は私物ですよ。公教育の場に持ち込まれては困りますね、平野先生」
「お、お前……」
怒りで、声が震える。
「今、飲んだコーヒーを返せ!」
と知己の怒鳴り声が、すっかり暗闇に包まれた特別教室棟に響いたのは、言うまでもない。
その夜、知己は思い出した。
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