第1話 視察

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(いや、待てよ。こいつ「想像していた」とか言ったぞ。ということは……!)  恐ろしい想像が知己の頭をよぎった。 「ちょっと待て。つまり、この八年間、俺はおまえのおかずだったのか?」  「はい! 最高でしたよ。想像でも」  明るい将之の言葉に、知己はちょっと所ではない寒気に襲われた。  おかず。  つまり夜のお供。  マスターベーション時の妄想のお相手。 (か、勘弁してくれ……)  知己が目眩に倒れそうになっているのを堪えていると 「先輩、メルアドと携帯の番号を教えてください」  と、悪びれもせずに……いや、おそらく本当に悪いなどとは露ほどにも思っていないのだろう……将之が言った。 「あ?! 何言ってるんだ。もう、いいだろ? さっき、『私物も有効』ってお前、言ったじゃないか!」  知己は、将之との関係は一度きりのつもりだった。  引きずる気は毛頭ない。 「何、言っているんですか? 私物は私物ですよ。公教育の場に持ち込まれては困りますね、平野先生」 「お、お前……」  怒りで、声が震える。 「今、飲んだコーヒーを返せ!」  と知己の怒鳴り声が、すっかり暗闇に包まれた特別教室棟に響いたのは、言うまでもない。  その夜、知己は思い出した。     
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