第2話 いい所探し

4/28
1285人が本棚に入れています
本棚に追加
/340ページ
「ああ。分かった。分かった。お前が正しいよ。俺がルーズだったよ。決まりにうるさいお役人さん」 「分かればいいんですよ」  やはり、将之に嫌味は通じない。  それとも分かっていて、スルーしているのか? 「それで今日はお互いの事をもっと知ろうという事で、デートです」 (男同士で、デート……?)  知己は首を傾げたが、この男に何を言っても通じないだろうと諦め、異を唱える事はしなかった。 「俺、明日、用事があるんだけど……」 「そうなんですか。明日は土曜日でしょ? 休業日なのに?」 「大学時代の友人と会う約束があるんだ」 「……男ですか? 女ですか? いや、先輩の場合、男でも油断はできませんね……」  将之が嫉妬に駆られた目で知己を見つめ、ぶつぶつと文句を言い始めた。 「男だけど、お前と違って普通の奴だから。変な事を考えるな」  懲りずに嫌味を入れてしまうのは、知己がすっかり将之の言動にやさぐれてしまった所為だろう。 「兎に角、そういうわけだから。そんなに遅くまでデートとやらに付き合わせるなよ」  知己としては、全くの予定外の将之との待ち合わせ。早々に済ませたい。油断すると、また何をされるやら気が気でない。  そこで 「じゃ、どっかでバーガーでも買って、映画行くか? さ、行こう」     
/340ページ

最初のコメントを投稿しよう!