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「ああ。分かった。分かった。お前が正しいよ。俺がルーズだったよ。決まりにうるさいお役人さん」
「分かればいいんですよ」
やはり、将之に嫌味は通じない。
それとも分かっていて、スルーしているのか?
「それで今日はお互いの事をもっと知ろうという事で、デートです」
(男同士で、デート……?)
知己は首を傾げたが、この男に何を言っても通じないだろうと諦め、異を唱える事はしなかった。
「俺、明日、用事があるんだけど……」
「そうなんですか。明日は土曜日でしょ? 休業日なのに?」
「大学時代の友人と会う約束があるんだ」
「……男ですか? 女ですか? いや、先輩の場合、男でも油断はできませんね……」
将之が嫉妬に駆られた目で知己を見つめ、ぶつぶつと文句を言い始めた。
「男だけど、お前と違って普通の奴だから。変な事を考えるな」
懲りずに嫌味を入れてしまうのは、知己がすっかり将之の言動にやさぐれてしまった所為だろう。
「兎に角、そういうわけだから。そんなに遅くまでデートとやらに付き合わせるなよ」
知己としては、全くの予定外の将之との待ち合わせ。早々に済ませたい。油断すると、また何をされるやら気が気でない。
そこで
「じゃ、どっかでバーガーでも買って、映画行くか? さ、行こう」
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