第2話 いい所探し

5/28
1290人が本棚に入れています
本棚に追加
/340ページ
 面倒だったので、デートすれば将之は満足なのだろうと、知己の想像する一般的デートコースを提案した。 「なぜ、映画を見るんですか?」 「ああ?」  意味が分からず、聞き返す。 「折角、先輩と二人っきりなのに、2時間ほどただスクリーンを見るだけだなんて、そんな勿体ない事、僕にはできませんよ」  将之は真剣に言った。  おおよそとんちんかんな問答が多いが、例えば行為の最中に何度となく告白など、時々、将之は情熱的だ。 (こんな奴なのに……)  大事にされている事を知らされ、知己は妙に恥ずかしいような、何とも言えない複雑な気持ちにさせられた。 「先輩は、カレーは好きですか?」 「あ、ああ……」 「僕の気に入っているカレー屋があるんです。」 (いいとこのボンボンの癖に、カレーだなどと意外と庶民的な所もあるんだな。こいつ。それとも俺に気を遣って、合わせているのか?)  知己は思った。 「まず、そこで食事をしましょう。ご案内しますよ」  そう言って、将之は駅地下の駐車場に知己を連れて行った。
/340ページ

最初のコメントを投稿しよう!