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面倒だったので、デートすれば将之は満足なのだろうと、知己の想像する一般的デートコースを提案した。
「なぜ、映画を見るんですか?」
「ああ?」
意味が分からず、聞き返す。
「折角、先輩と二人っきりなのに、2時間ほどただスクリーンを見るだけだなんて、そんな勿体ない事、僕にはできませんよ」
将之は真剣に言った。
おおよそとんちんかんな問答が多いが、例えば行為の最中に何度となく告白など、時々、将之は情熱的だ。
(こんな奴なのに……)
大事にされている事を知らされ、知己は妙に恥ずかしいような、何とも言えない複雑な気持ちにさせられた。
「先輩は、カレーは好きですか?」
「あ、ああ……」
「僕の気に入っているカレー屋があるんです。」
(いいとこのボンボンの癖に、カレーだなどと意外と庶民的な所もあるんだな。こいつ。それとも俺に気を遣って、合わせているのか?)
知己は思った。
「まず、そこで食事をしましょう。ご案内しますよ」
そう言って、将之は駅地下の駐車場に知己を連れて行った。
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