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高層ホテルを見上げながら知己がいぶしかげに思っていると、将之の連れて行った先を見て、またもや
(やっぱり、こいつの感覚、分からねー!)
と、自分と将之の一般常識の違いを確信した。
その高層ホテルの一角のインド料理の高級レストランの前で
「ここですよ」
と、将之が爽やかな笑顔と共に言ったからだ。
「……お前、な」
(ここのどこが「カレー屋」だ? インド料理店と言うんだぞ!)
と、異論を唱えようと文句言いかけたが、その前に頭にターバン巻いた外国人店員が話しかけてきたから、とりあえずやめた。
将之は慣れた様子でその店員と話すと、そのまま奥の個室に案内された。
仕方なく知己も黙ってついて行った。
メニューを渡されたが、日本語で書いてあるにもかかわらず、何を注文したらいいのか分からない。
カレーの種類が多すぎるのだ。
甘口、中辛、辛口程度の種類しか分からない知己は、メニューを見て悩んだ。
すると
「好き嫌い、ありますか?」
と、将之が尋ねてきた。
「ないよ」
「じゃ、コースにしましょう。同じものでいいですか?」
「そうだな。面倒だし」
「飲み物は何にします?」
そこで知己は改めてメニューを見た。
「……なあ、この『ラッシー』って飲み物はなんだ?」
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