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おぼつかない足取りの知己は、将之に支えられつつ部屋に連れ込まれた。
薄暗い明かりが灯る高級ホテルのツインルーム。
二つ並んだベッドの一つに、知己をそっと下ろした。
「ぅ……」
体が横たえられ、重力のかかる方向が変わり、わずかに知己は声を出した。
だが力が入らず、そのままそこに体を投げ出した。
「スーツ……皺になっちゃいますよ」
将之は、さも親切そうに知己の上着を脱がせる。
抵抗したくとも、朦朧とした意識では思うように体が動かせない。
それでも、気力を振り絞り
「……触るな」
と、知己は言い放った。
「まだ、そんな意識があるとは……驚きです。でも、安心していいんですよ。ゆっくり部屋で休んでください」
将之が知己のネクタイをゆるめつつ、言う。
「冗談だろ……。お前、さっき……フロントで『予約してた』って言ってたな? アレはどういう意味だ?」
「あはは、聞こえちゃいました?」
知己が腕を押さえるのもかまわず、将之は言いながらネクタイを抜き取った。
「まんま、ですよ。先輩と、ぜひホテルで一夜過ごしたくて」
「……お前、デートだと言ったろう……?」
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