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第3話 親友
知己はその日、大学時代からの友人・家永晃一に自宅で会う約束をしていた。
が、前日に高校時代の後輩・中位将之に無理矢理ホテルに連れ込まれ、またもや強姦まがいの酷い目に遭わされた。
おかげですっかり寝坊し、既に時計は10時近くを回っている。
慌てて「遅れる」と家永にメールを送った。
すると数秒も経たないうちに家永から、折り返し電話がかかってきた。
「どうした、平野? 何やってんだ?」
「すまん、家永。寝過ごした」
「構わないだろ? 待ち合わせは、お前ん家じゃないか」
少し、電話口の家永の声が笑う。
知己が家から電話に出ていると思っているらしい。
それで
「実は今、出先で……」
と、知己は言葉を続けた。
「昨日、……たまたま後輩に会ったんだ。それで飲んだら、ちょっと飲み過ぎてしまって……その飲んだホテルで休んだんだが、そのまま寝こけちまったみたいで……」
知己より少し離れて身支度していた将之が
「たまたま?」
と、異を唱える声を発したが、知己は軽く無視した。
(男に脅されてデートして、一服盛られて強姦された……なんて、言えるかよ)
知己は心の中で呟く。
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