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進路はそれぞれ分かれたものの、特に在学中の頃と変わりなく卒業後もつきあいは続いていた。
家永とは、週に1度は知己の休日を利用して会っていた。世間話や仕事の話など話題は尽きることがない。愚痴を聞き合ったり、お互い励まし合ったり、正に「親友」と呼ぶにふさわしい男だった。
(そんな親友に、嘘なんてつけない。俺は、ちょっと……言いにくいこと伏せていただけだ)
半ば自分を諭すように、知己はそう思った。
「毎週会っているだなんて……僕、すっごく妬けるんですけど」
将之は不満げに少し頬をふくらませた。
そういう仕草が、知己より年下の24才の青年らしいといえば、らしい。
(やることはエロ親父。全然、24歳の青年っぽくないけど、な)
「僕の知らない先輩を知っているというのも妬ける」
「俺はお前みたいなぼんぼんとは違うから、普通に公立大学へ行ったんだ。金のかかる私立四年制大学なんか行けるか。お前とは、元々住む世界が違うんだよ」
一応、嫌味である。
が、無論、将之は気付かない。
「一緒だったのは高校だけでしたね」
それさえも知己にとっては黒歴史だ。
第一志望の公立高校受験を失敗し、私立高校での3年間。
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