第3話 親友

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 やがて、知己の家に着いた。  見ると、既に家永がやってきていて、玄関先の所で携帯を弄りながら知己の帰りを待っていた。 「……お帰り」  将之の車から降りる知己に少し間をおき、声をかける。 「遅くなってすまん。 ……どうした?」  家永の視線は明らかに知己にではなく、別の所へ寄せられていた。 「いや、まさかベンツで帰ってくるとは思わなかったから」  視線の先には将之のメルセデスベンツ。 「電話で言った後輩・将之の車だよ。こいつ、ぼんぼんなんだ」  同じく視線を将之に移し、知己が答えた。 「失礼ですね。全部聞こえていますよ、知己先輩。」  運転席から、身を乗り出して将之が言った。 (名前呼び……?)  家永は、少し不思議に思う。  知己はあまり名前呼びをしなかった。  親友の家永にでも、名字の呼び捨てくらいだ。 「じゃ、また連絡入れます」 (はあ? 連絡? 要らん)  思わず将之の言葉に知己は表情を曇らせた。  だが、取りあえず 「ああ。送ってくれてありがとう」  嫌な相手だが、知己は礼を言った。  家には、誰も居なかった。  両親は買い物か何かだろう。  車がない。  出かけた様子だ。  毎度の事なので、知己も家永も気にしなかった。     
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