第3話 親友

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「入っていいぜ」  知己は、昨夜の痕隠しに選んだタートルネックのシャツといつものジーパンに履き替え、家永を部屋に招き入れた。 「いつもの平野になったな」 「え? そうか?」  家永の言葉に、少し嫌な汗をかく。  昨夜の匂いは、朝のシャワーで流した筈。  ばれっこない。  自分が男に犯された事など……。 (情けないな……)  知己の心の中を、何とも言えない惨めな気持ちが通り過ぎる。  だが、それも僅か。  今は、家永が居る。 (こうして家永と話していると、やっと日常に戻ってきたって感じがするな)  昨夜も、その前の事も、全部悪い夢。  知己は、いつもの自分に戻れた気がした。  六畳の部屋の真ん中に置かれた小さめのテーブルに、二人分のコーヒーの湯気が立つ。  そこに座って、いつもの近況報告など色々と話を始めた。 「あ、そうだ。この間、お前が探してた本を見つけて持ってきたけど」  おもむろに、家永が鞄の中から本を取り出した。 「へえ、よく見つけたな。俺、ソレ、すっげ読みたかったんだ。サンキュー」  受け取ろうと知己が腕を伸ばすと 「……」  不意に家永が眉を潜ませた。 「何?」 「平野……、その痣は……?」     
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