第3話 親友

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 のばした知己の右手首に、昨夜ネクタイで縛られた痕がくっきりと残っていたのだ。 「あ……」  迂闊だった。  急いで手首を隠したが、時既に遅く、家永にその腕を掴まれ袖を肘までめくられていた。 「……なんだ、コレ」  痛々しい痕に愕然とする家永。  知己は、ただただ体を硬くするばかりだった。  頭が真っ白になる。  何と誤魔化そうか、必死で思考を巡らすも、あまりのパニックで何も思い浮かばない。  更に、家永が首筋のタートルで隠しきれなかった痕にも気付いた。 「お前……、コレ……?」  知己の体を掴んだ右腕ごと引き寄せたかと思ったら、そのまま仰向けに知己を押し倒した。 「やめっ……!」  嫌がる知己のタートルシャツを、無言で家永がまくり上げる。 「平野……!」  家永がそれだけ呟いて、昨日将之が付けた痕が生々しく残る知己の上半身を、愕然として見つめていた。 (見られた!)  親友に見られた。  男に犯された痕を見られてしまった。 (……軽蔑される……)  巡る血が、水のように冷えていくのが分かる。  知己がどうしようもない絶望感に捕らわれていると、家永が 「あいつか……? あの『将之』って奴がやったんだな?」  と、低い声で尋ねてきた。 「家永……あの、俺……!」     
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