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のばした知己の右手首に、昨夜ネクタイで縛られた痕がくっきりと残っていたのだ。
「あ……」
迂闊だった。
急いで手首を隠したが、時既に遅く、家永にその腕を掴まれ袖を肘までめくられていた。
「……なんだ、コレ」
痛々しい痕に愕然とする家永。
知己は、ただただ体を硬くするばかりだった。
頭が真っ白になる。
何と誤魔化そうか、必死で思考を巡らすも、あまりのパニックで何も思い浮かばない。
更に、家永が首筋のタートルで隠しきれなかった痕にも気付いた。
「お前……、コレ……?」
知己の体を掴んだ右腕ごと引き寄せたかと思ったら、そのまま仰向けに知己を押し倒した。
「やめっ……!」
嫌がる知己のタートルシャツを、無言で家永がまくり上げる。
「平野……!」
家永がそれだけ呟いて、昨日将之が付けた痕が生々しく残る知己の上半身を、愕然として見つめていた。
(見られた!)
親友に見られた。
男に犯された痕を見られてしまった。
(……軽蔑される……)
巡る血が、水のように冷えていくのが分かる。
知己がどうしようもない絶望感に捕らわれていると、家永が
「あいつか……? あの『将之』って奴がやったんだな?」
と、低い声で尋ねてきた。
「家永……あの、俺……!」
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