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震える声で何でもいいから取り繕おうとしていた知己の唇を、家永のそれが塞いだ。
(……え…?)
知己は自分が何をされているのか、分からなかった。
やがて、家永にキスされていると分かった。
だが、それだけだった。
混乱が過ぎて、思考は停止。
もはや何も考えられなくなっていた。
その上
「……んっ……! ふっ……!」
家永はわずかずつ角度を変えて、知己の唇を吸った。
その合間をぬって知己は浅い呼吸をすることができたが、未だに思考は止まったままだ。
「……ん……ふっ…ぅ」
思うさま家永に唇を吸われている内に、頭の奥がずぅんと痺れるような甘い疼きに襲われ始めた。
やっと家永が知己の頭を解放した。
「……」
キスの余韻で知己はぼうっとして視点が定まらないまま家永を見つめた。
その恍惚の風貌さえ、家永には妖艶に見えたのであろう。
家永も知己を黙って見つめていた。
やがて、知己の思考がまとまり始めた。
一番に初めに感じたのは、ショックだった。
(俺……、親友にキスされた……?)
頭がぐるぐる回って、言葉にならない。
(軽蔑される、気持ち悪がられると思っていたのに……。なんで家永は、キスなんかしたんだ?)
「……お前は、ノンケだと思ってた」
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