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濃厚なキスの後の静寂を我慢できずに破ったのは、家永の方だった。
ぼそりと知己の上に乗ったまま、見下ろしつつ言う。
「ずっと、大事に思ってて……。もしも、この気持ちを知られたらお前の一番の『親友』でいられなくなることが恐ろしくて、一生黙っているつもりだった」
(……家永が、俺の事を?)
動揺を隠せない知己の顔を見つつ、家永が続けた。
「俺だって最初からお前の事、こんな風に思っていた訳じゃない。初めはこの気持ち、俺の勘違いだと思っていた。きっと一番の大切な人という気持ちが、『好き』って気持ちと勘違いしているんだと思ってた。いや、思い込もうとしていた。でも、どうしようもなくお前が俺にとって大事な人になってて、失いたくなくて……」
家永がそんなことを思っていたなどと、微塵も気付かなかった。
「お前はノンケだろうから、俺に好きだと言われても困るだろうから……だったら、一生親友として側に居ようと思うようになっていた。俺は、お前への気持ちを封じてしまおうと思ったんだ」
言い終わると、家永の視線が、昨夜の陵辱の痕も生々しく残された知己の上肢に移された。
「……あ……!」
そこで知己は、はっと現実に返る。
家永に押し倒されている自分を。
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