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「え? じゃ……」
家永が顔を上げて、改めて知己に近付いた。
肩に手を置かれ
「いや、そういう意味じゃなく……!」
慌てて知己が、近付く家永の顔を腕で押しとどめた。
「平野……」
今度こそ、本当にキスされそうな距離になった時だった。
「そこまでにしてください」
誰も居る筈ないドアから声がした。
知己と家永がはっとしてそちらを見ると、そこに将之が立っていた。
「お前……なんで、ココに?」
(さっき、自分ちに帰った筈だろ?)
知己が尋ねると
「昨日の晩、先輩を介抱してて、間違えて先輩の上着ポケットに僕の腕時計を入れちゃったみたいなんですよ。それを思い出して、取りに戻ったんです。何度もチャイム鳴らしても誰も出てきてくれなくて。それも当然ですよね。こんな事になってたんじゃ……」
将之は、冷たい視線で二人を見下ろした。
「……っ!」
知己は赤面して、そそくさとまくり上げられたタートルシャツを引き下ろす。
隠れるのは腰の辺りまでだが……それでも丸出しよりはマシだ。
家永もばつが悪いのか、体の向きを変えて少しだけ知己から離れた。
「ふーん……」
じろりと二人を睨み付け
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