第5章 陽だまりの香り

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「……驪珀から聞いている。驪明さまが」 「彼女が私のことを忘れてから、もう、四ヶ月という月日が経ちました。そしてそこから、彼女は一度もこの国にいらしておりません」  風に喚びかけては、驪明の様子を見て、そのままなにもせずその風を消すということを繰り返していた白葉。  驪明が転んでしまいそうになったらその風を使い身体を支え、驪明が悲しい顔をしていたらその風で身体を包み込んで。 「四ヶ月など、俺たちにとって」 「ええ、そうですね。息をする程度の……ふふっ」  そう、四ヶ月なんて、それくらいの時であるはずなのだ。  ――ああ、おかしいですね。私は以前に……  三日なんて瞬き程度の時間だと、そう驪明に言ったのに。今ではその三日ですら、途方もなく長い時のように感じてしまっている。 「驪明さまに会う、ということが当たり前になって……」 「……それで、部屋にこんなにも」  驪明が喜びそうな甘味や、髪結い紐に、簪。そして、着物。 「莫迦莫迦しいですよね。……さあ、私は玉翠国の王、白葉として、みなさんの前に」 「白葉」 「役目を果たさず、申し訳ございませんでした。他国の王であるあなたに」 「白葉……!」  凄い剣幕で名を呼ばれ、白葉は目をぱちくりとした。  一体、なんだというのだろうか。  国民に心配をかけるなと、そう言ってきたのは彼であるはずなのに。だから顔を出さないとと立ち上がったというのに、何故、とめるように名を呼んできたのだろうか。 「大声を出すだなんて……。さすが、野蛮な民が多い黄呀国の王なだけありますね」 「そうやって憎まれ口を叩くのは、いつもの貴様らしいが」 「ふふっ。……そこを、退けていただけますか?」 「退けん」 「あらあら、それではみなさんのところに」 「……明後日、白亜国の王が生け贄を持ち帰ってくるようだ」  脈絡もなく何故急にそんな話をしてきたのかわからず、白葉は首を傾げた。  いや、なんと言われるのかなんとなく察してしまったから、白葉は笑顔を張り付けその“先の言葉”を拒絶する。
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