僕の事情

13/35
前へ
/69ページ
次へ
その日のバイトの時、僕が気になったのは、田中さんの視線だった。 ホールの案内をしている僕のことを、視線で追ってくる。 田中さんも、ホール担当だ。 すれ違いざまに、コソッと、僕に囁く。 「あれから、もう、大丈夫なの?」 「あ、は、はい。その節は、ありがとうございました。」 僕はその視線を気にしながらも、お礼を言った。 栄も、ホール担当だ。 「田中さんに、何か言われたの?」 お客様が落ち着いた時に、栄が僕の隣に立った。 「ああ・・・うん・・・田中さんにも、知られちゃったんだ、僕の・・・その・・・」 「両性・・・のことか?」 「うん。」 「そっか・・・気をつけろよ、お前・・・なんか田中さんに狙われてる。」 !僕は、その言葉に吃驚した。 栄も感じてたなんて・・・ でも、田中さんは、何も言ってこない。 その日のバイトが終わった後、バックヤードで、栄が先に部屋を出た。 瞬さんは、厨房の手入れをしている。 田中さんと、二人きりになった。 無言になる僕と田中さん。 そうしたら、いきなり、田中さんが、僕を抱き締めた。 僕は戸惑う。 「俺・・・君のことが好きになったみたい。」 え・・・うそでしょ・・・・・・ 僕は呆気に取られて田中さんを見つめた。
/69ページ

最初のコメントを投稿しよう!

398人が本棚に入れています
本棚に追加