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もう電車は動いていないので、瞬さんが、タクシーのチケットを僕らにくれた。
僕と栄、別々に1枚ずつ。
こうして、交通費も出してくれるなんて、ホントにいい職場だと思う。
でも、先輩達の分が、無い。
どうしようかと考えて居たら、栄が言った。
「俺、類と一緒の方面なんで、一緒に帰ります。だから、このチケット、お二人で使ってください。」
何を言い出すかと思えば・・・
栄と二人きりでタクシーに乗るなんて、ゴメンだ。
その気なら、僕は自分でタクシーを拾って帰る。
「いいのか?二人とも。」
「悪いな。」
先輩達が去るまで、見送った。
栄がこちらに近づく。
「類・・・・」
「僕は、一人で帰るから、そのチケット、使っていいよ。じゃあね。」
「類!」
僕が栄から離れて行こうとすると、栄が僕の腕を掴んだ。
ビクッと、震える僕。栄の顔をまともに見れない。
「類・・・ごめん・・・・本当にごめん。俺、どうかしてた。もうあんなこと、絶対にしないから、だから・・・許してくれないか?・・・」
僕の身体はカタカタと震えていた。
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