僕の事情

30/35
前へ
/69ページ
次へ
「本当に・・・もうしない?」 僕は、小さい声で、聞いた。 俯いていた栄の顔を見つめる。 栄が顔を上げて、僕を見つめた。 「本当に。神に誓って。これからは、友人として、一緒に居て欲しい。」 栄の言葉は、しっかりとしたものだった。 真剣な顔を浮かべている。 僕は、許そうと思った。 だって・・・栄は・・・大事な幼馴染みで・・・ 栄とは違う意味だけど、栄のことは好きで・・・ 「でも、僕が栄を恋愛の意味で好きになることは絶対に無いよ?」 栄は、しばらく黙ったまま、僕を見つめていた。 「それでもいい。これからも友人で居てくれ。」 僕は、栄を信じようと思った。 もう、あのことは・・・忘れよう・・・ 「分かった・・・お前のこと・・・許す・・・」 「ありがとう・・・類・・・」 「でも、二度とあんなことしたら、今度は絶対に絶交だからね。」 僕は、念を押した。 なんとなく僕は、ホッとした。 いつまでも怒っているのはイヤだ。 今まで仲良くしていたのに、離れて行くのは嫌だった。 僕と栄は、同じタクシーで家まで帰った。 タクシーの中では、なんの会話も無かったけど。 反省しているらしい栄が、しょんぼりしていた。
/69ページ

最初のコメントを投稿しよう!

398人が本棚に入れています
本棚に追加