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必然的に、栄は小泉先輩と行動を共にするようになり、僕から離れていった。
坂田先輩は、そんな二人を、切なそうに見つめている。
大学では、僕と坂田先輩、栄と小泉先輩が行動を共にするようになった。
僕は・・・なんとなく、寂しい。
坂田先輩は、何も言わない。
僕は、なんとなく、違和感を感じていた。
バイトでは、栄と普通にしゃべれるようになっていた。
小泉先輩とのことを聞くと、途端に無口になった。
二人の間のことは、秘密ってことか。
それも僕には、なんとなく、面白くなかった。
自然と、僕の目は、田中さんに向いていった。
バイトで一緒の時、栄としゃべるよりも、田中さんとしゃべる時間の方が長くなっていった。
心配そうに僕達を見る田中さんの優しさに、僕は惹かれていった。
「おっと。」
僕が、頼まれたものをお客様のところに運ぼうとしていたとき、あまりに多い注文で、重たくてバランスを崩し、今にも転びそうになったところを、田中さんが僕の腰を支えてくれた。
僕は、なんとか、転ばずに済み、田中さんにお礼を言った。
「あ、ありがとうございます。」
「ううん、気をつけてね。」
田中さんの笑顔が優しい。
田中さんはまだ、僕のことを好きでいてくれるんだろうか。
でも・・・この感情はもしかしたら。
もしかしたら、栄が離れて行った身代わり?みたいなものなのかな・・・
そうだとしたら、田中さんには迷惑だろう。
僕は、中々田中さんに対する気持ちを把握しきれずに居た。
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