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「ちょっと、更衣室の方の掃除、してくる。」
オーナーの瞬さんに田中さんはそう声を掛けて、僕を更衣室に連れて行った。
扉を閉めて、カギを掛ける。
改めて、田中さんは、僕の下半身を見つめた。
「どうしたの?下血?ケガでもした?」
「・・・・・・」
田中さんは小声で、優しく心配してくれる。
「ケガでは・・・ありません。下血でも・・・実は僕、両性具有なんです。」
僕はもう知られてしまったものはしょうがないと、はっきりと告げた。
田中さんは、聞き慣れない言葉に、えっ?と聞き直す。
「両性具有です・・・知りませんか?両方の性器がある・・・・今日は、ちょうど生理の日だったんです。これは、生理の血です。」
田中さんは信じられる人だと僕は思った。
だから、告白した。
田中さんは、ハァッと、信じられない溜息をついた。
「とにかく、着替えないと・・・バイトの制服のズボンに着替えて。それから・・・トイレには行きたい?」
「ああ、いえ、もう出切っちゃってる感じなんで、ティッシュで下着を拭いて、ナプキンを替えれば大丈夫だと思います。」
「そう、なら、早く着替えて。俺、向こう向いてるから。」
「は、はい。すみません。迷惑をお掛けして。」
僕は、このズボンはもうダメだな、と、血が滲んでいる部分を隠して、下着を拭いたティッシュと一緒にゴミ箱に入れた。
田中さんは、そのゴミ箱のゴミを、燃えるゴミ袋に入れて、先を結んだ。
優しい・・・思いやりを感じた。
やっぱり、この人にはバレても大丈夫だ・・・僕は直感した。
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