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魔界ガルドラの西端に位置する大きな島、エクストロン島。
その島の北端に広がる青き砂漠の王国フィブラスは、月の光を受けて、どこまでも青い光の絨毯が広がっている。
まるで、その砂の中に青い宝石が埋まっているかのように。
フィブラスの第三砂龍王子デュラックは、自らの運命を切り開く冒険の第一歩として、王国の青い砂を右手ですくい取り、小さな瓶の中に詰めた。
この瓶は、彼が城を出る前に、上の兄である王太子リーノがくれた物である。
(この砂は、いつかきっと役に立つ時が来るだろう)
デュラックは、王国の砂を詰めた小瓶を、大事そうにズボンのポケットにしまった。
彼は少なからず、この砂が持つ力を感じていた。
左肩には、王国の紋章である金の砂龍の彫刻が施された水色の肩当てを身に着け、そのすぐ下には、橙色の隙をかけている。
白色の斜めかけ鞄には、魔界ガルドラの地図や数本の投げナイフ、数本の松明が入っており、右膝につけた赤茶色のベルトには、父王からの頂き物である銀製の爪型銃を挿している。
初めての旅であるにも関わらず、彼はこれから自分の身に起きることを既に予測できているかのような格好だ。
しばらく、デュラックは自分が十四年間過ごした城を見た。
青き砂漠の上に建つ、大きくて頑丈な水色の壁の王城。
彼は、名残惜しみながら、その城を後にした。
早朝五時半の冬の空は、まだ月が沈む気配がない。
寒さが苦手なデュラックにとっては、早くこの時期が終わってほしいとさえ思える。
フィブラスから南に三キロ行った先には、港街クライアスがある。
この港街から、今の時間帯に出航する便があるという。
彼は、その便で魔界ガルドラの中枢にある水の都アヌテラを目指す。
(アヌテラは、この魔界の中枢に当たる都市。
あそこに住む水龍族は、砂龍族の人口をも上回ると聞く。
魔道族の城の黒い雲の手がかりを得るには、もってこいかもしれない)
魔道族と、城のてっぺんを覆う黒い雲の正体についての手がかりを、一刻も早く得たい。
デュラックは、水の都行きの船に乗りながら、黒雲に対する不安を募らせていた。
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