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「お前は父上や二人の兄に似て、頑固だからな。
私はこれから、謁見の間に行ってくる。
これまで何回も父上や母上に従ってきたが、今回ばかりはちゃんと反論してやる」
デュラックは右の拳を固く握り、そのまま自分の部屋を出た。
初代砂龍王ラドダンと王妃マールの間に生まれ、第三王子として王の補佐を務めてきたデュラックだが、二人の兄であるリーノやディアの頑固さには、ほとほと困っている。
更に末っ子ということも手伝って、どうしても自分の家族に逆らえないのである。
彼は、そんな自分に心底嫌気がさしてきていた。
(私は、よその国に赴いてトラブルを解決するという立場の魔族ではない。
ほぼ飾りだけの王子に等しいのに、なぜ北端の領国での調査を引き受けなければならないのか?
母上の意見で決定したことだから、母上本人に聞くのが手っ取り早い)
デュラックは、砂龍王ラドダンに酷似した深緑色の目を細め、いつもより速い歩みで、謁見の間を目指す。
謁見の間の扉の前には、目を細めたままの状態で立っている第三王子を心配そうに見る男性の門番の姿があった。
それを見た時、デュラックは尚一層嫌な顔をした。
彼の態度を懸念して、門番は溜め息を漏らしながら、口を開く。
「デュラック様、まるでマール王妃様に会われるのが嫌なご様子ですね?
一体、王妃様のどこがご不満なのでしょうか?」
門番は、王妃を庇うような言い方だが、それがデュラックにとっては気に入らない。
彼は、怪訝な顔をして言う。
「全部だ。
母上はいつもわがままで、父上の意見をほとんど聞かないし、私達兄弟――特に王太子であるリーノのことなど、まるで≪即位するためだけにある道具≫のようにしか思っていない。
今まではなんとか我慢して、母上の命令に従ってきたが、今回ばかりはそうはいかない。
父上の意見も聞き入れて頂き、黒雲が発生した原因について調べる件に関しては、断りの返事をする。
だから、謁見の間に通してくれ」
デュラックの怒気を含んだ声と、どうしても王妃に言いたいことがあると言いたげに訴えてくる深緑色の瞳の輝きに負け、門番は何も言わずに、第三王子を謁見の間に通す。
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