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このままにしておけば、被害は領国の魔道族のみならず、この魔界全ての種族が黒雲による毒を受けて、たちまち我々も滅んでしまう。
そこでわしらは、お前を含め、十人の能力者達を集めて、黒雲を発生させている元凶を、倒してほしいと思っている。
どうだ、息子よ。
この件に関しては、考え直してくれんか?」
父王からの説教を受け、デュラックは己の運命を顧みる。
それは、今年で十四になったばかりの彼にとっては、体に酷く重たいもの。
(父上の言う通り、あの黒雲は魔界ガルドラ全土を包み込もうとしているのかもしれない。
だとすれば、父上が言った≪十人の能力者≫とやら――もとい、残り九人の戦士達を捜し出すために、私が動かなければならない、ということか)
ようやく自分の運命を悟ったのか、デュラックは再び玉座の上の両親を、深緑色の双眸で見つめる。
今度は≪断固拒否≫という意味ではなく、むしろ十人の戦士達を捜すための旅に出ることを決意したような眼差しに変わっている、と初代砂龍王には見えた。
「父上、母上。
このデュラック・シャーロット、己の運命を切り開くため、明日から領国の調査に出て参ります。
どうか、お達者で」
「ああ。
それと、お前に渡したい物がある」
そう言ってラドダン王は、目で近衛兵に合図し、青紫色の布が被せてある物を持って来させた。
男性近衛兵が布を外すと、デュラックの目の前には、銀で造られた右利き用の爪型銃のような物が、きらきらと輝いている。
それは、デュラックの深緑色の双眸にも似た輝きを放っている。
「この武器は?」
デュラックは、自分の右手に爪型銃をはめ、彼の腕にフィットしているかどうかを確かめた。
父王ラドダンは、息子に微笑み、口を開く。
「その武器は、シルバー・ドラゴン・クロー。
その名の通りの銀製だ。
息子よ、どうか無事に戻って来ておくれ」
それだけを言い、ラドダン王は玉座を立ち、そのまま謁見の間を出た。
デュラックはその姿を見送った後で、「御意」と言って謁見の間を出て、自分の部屋に戻る。
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