そうだ、銀座へ寿司を食べに行こうよ!

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。 七十過ぎの老人が二十歳代の美しい女を同伴してカウンターの真ん中に座った。 キャバクラの同伴出勤でもなく多分、ホテルへ行く前の腹ごしらえであろうか。達は老人を密かに「会長」と内心呟く。一見すると女は素晴らしく素敵なのだが悲しいかな乳房は魅力不足に平坦貧相であった。よく見るとメイクも減なりブルーがかったアイシャドウがセンス無し。 まぁいいや。情事の前の寿司三昧である。つまみは貝類が中心とならざる得まい。行為の前のイマジネーション。リアルに腥い。リアルに目の前。しかも胃袋に入っていく。嚥下嚥下。会長の唇が卑猥に歪んでいる。赤貝なのかミル貝なのかツブ貝なのか貝のエキスが腔内に充満する。女も同じ貝を食べている。自分の貝に回り回って同化一体となるはずだった。その前に貪欲な会長の唇や舌にエロスがエキスと合わさる瞬間がもう間近だった。 休日のお伴は銀座の寿司屋に限る。気怠い昼下がり。銀座のパーラーで待ち合わせ。宝石にアクセサリーそして高価な服を何着も買い込んで、「さぁ寿司を摘もうか」「その後は・・おまかせだぞ・・」 でもこれでは有り触れた誰でも思い浮かぶ安っぽいドラマのアウトラインでしかない。そう銀座の夜の物語は街場の駅前バルとは違うのだ。ここ銀座は国際都市東京の一番洗練された空間である。しかも寿司は日本が唯一世界に発信できる飲食文化なのである。 中国カップルと会長カップルがミックスする。会長が一眼レフを持った愛嬌のある中国女と同伴しあのグラビア女優の華やかでセクシーな日本ガールが中国人の兄さんと隣同士。 そうこの寿司屋は同伴ハプニングなカウンターが名を馳せる。会長は中国大陸への進出を遅まきながら目指している。グラビア女優の彼女はその「具」である。寿司で言えば「ネタ」である。接待の最高のおもてなしは「官能」であるから女体モリモリをカウンターの並行空間で行う。カウンター席取り合戦である。 盛りから隣り。寿司から隣り。(了)
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