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むかしむかしではないから、いまいま。
都会に一匹のかいぶつが住んでおりました。
都会はみんな自分のことで忙しく、誰もかいぶつのことなんて気にしないから住みやすいのです。
かいぶつは超高級マンションの最上階にある空き部屋でひっそりと、こっそりと、ちゃっかりと暮らしていましたが、あまりに長い間ひとりぼっちでいるため、なんだか少し退屈になってきました。
「そうだ! たんじょうびのパーティーをひらこう」
あまりにいい思いつきなのでかいぶつはわくわくしました。ですがそれには一つだけ問題がありました。
かいぶつはたんじょうびを持ってないのです。
かいぶつはエレベーターを降りると夜の町にたんじょうびを探しに出かけました。
途中、フェイスブックで今日がたんじょうびの人を検索してみたところ、べえ子という女の子が該当しました。
かいぶつはさっそくべえ子のところへいくことにしました。かいぶつが窓からのぞくとべえ子はお父さんやお母さん、兄弟やたくさんの友達に囲まれてたんじょうびパーティーの真っ最中でした。
「いいなぁ、うらやましいなぁ」
かいぶつは自分のたんじょうびを妄想しながら夜になるまでネットカフェで待機しました。
そしていよいよ夜中になりました。かいぶつはべえ子の部屋にそっとしのび込みます。
「うぉおぉ! おれさまはかいぶつだ! おまえのたんじょうびをよこさないと食っちまうぞ!」
べえ子はきょとんとしましたが驚いた様子はみせません。なぜならべえ子は都会っ子だからです。
「ばかねぇ、かいぶつなんているわけないじゃない。あなたいくつ?」
「うぉおぉ! いくつ……って、たんじょうびがないんやからわかるわけないやろぉ! うぉおぉ!」
なんだかかいぶつはバカバカしくなってきて吠えるのをやめました。
「あなたおたんじょうびをもってないの? じゃあ誰からもお祝いしてもらえないじゃない……かわいそうに」
べえ子に同情されたかいぶつは新橋のガード下でひとり飲んでるお父さんみたいにしゅんとなってしまいました。
「……だったら私のおたんじょうびをあげる!」
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