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「ほんとかい! ほんとにおれにたんじょうびをくれるのかい?」
「ええ、私からのおたんじょうびプレゼント。自分のおたんじょうびに誰かにプレゼントしたってかまわないでしょ?」
「でも、いいのかい? 大切なものなんだろ?」
「私はいいの。もう七歳だから。七回もおたんじょうびやってもらったんだもの。でも、ちっちゃい頃のは覚えてないけどね」
かいぶつはひゃっほうと飛び上がって喜びました。
「でも急がなきゃ。もう十一時よ。早くしないとせっかくあげたおたんじょうびが終わっちゃうわ」
かいぶつはべえ子にお礼を言うと急いで帰っていきました。途中、東急ハンズでパーティーグッズを買い揃えようとしましたが遅いので閉まってました。
そんな余計なことをしていたため、超高層ビルの自分の部屋に帰り着いた頃には十二時を過ぎ、たんじょうびはすでに終わってしまいました。
かいぶつはがっかりしました。
せっかく手に入れたたんじょうびをまた来年まで待たなければならないのです。
それでもかいぶつは待つ楽しさを堪能しました。
カレンダーを買ってきて自分のたんじょうびに〇をつけるとかいぶつは毎日毎日その日をのぞき込みました。
そしてそれから一年が過ぎました。
「今日は俺のたんじょうびなんだぜ」かいぶつはベランダの小鳥にいいました。
「きょうはおれのたんじょうびなんだぜ」かいぶつは表の野良猫にも囁きました。
「今日はボクのたんじょうびなんすよ、やになっちゃうなぁ、もう」かいぶつは普段エレベーターで会っても無言でやりすごしている人間にも話しかけてしまいました。
それくらい嬉しかったのです。
けれど夜になっても誰もかいぶつのところにはやってきませんでした。
それもそのはずです。かいぶつには友達がいないのですから。
かいぶつはテレビの中のにゃんこスターに言いました。
「今日は俺のたんじょうびなんだぜ……」
かいぶつは急にべえ子のことを思い出しました。たんじょうびを無くしてしまったべえ子はどうしてるんだろう?
悲しんでるんじゃないかな?
寂しがってるんじゃないかな?
かいぶつは居ても立ってもいられなくなり、べえ子のうちにとんでいきました。
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