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「社長」
「潰す必要がないなら、そこは手を出さなくてもいいだろう。役場と地元と相談して、そこだけでどうにか売れないか相談してくれないか」
「構いませんが。よろしいのですか、勝手にそのようなことを決めて」
「いいんだ。役員から苦情がきたら、こう言えばいい。手紙の代金だと、それと私に昔の思い出と届けてくれた人への私からの細やかな贈り物でもあると」
意味は分からないだろう。その意味を知っているのは、伊藤氏だけ。彼は自分の思い出に見合うだけの代金を払うことにした。ついでに、森を譲るというおまけをつけて。
遠くの方から、伊藤氏に感謝でもするかのように狐が鳴くような声が聞こえた。
それは秋も終わり、冬に差し掛かる日のことであった。
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