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だけど、数歩歩いてワタルさんが私を振り向き、ヤチさんに何か告げた後また戻ってくる。
「何?どうかした?」
先を行った彼はカウンターを通り過ぎてロッカーの方へと姿を消し、ワタルさんはしゃがんで私と視線を合わせた。
「ごめんね、ほんとはもっと舐めたり同時に責めたり色々したかった」
それを伝えるのにわざわざ戻ってきてくれたのか、と合点がいく。
嬉しいなぁ。感情がそのまま表情に出たらしく、彼の顔も柔らかく微笑んで頭を撫でられた。
「彼に気遣ったんでしょ。わかってるよ。知り合いと来るっていうのもちょっと考えものだね」
「確かに。今度会ったらマンツーでしたいな。反応いい人は責めるの楽しいから」
「うん、ありがと。また会えたらね」
後頭部を撫でる手に促され、軽いキスを交わす。一期一会だから、いつ会えるかどうかも基本的にはわからない。
この場限り。それもまたスパイス。刺激的。今度は誰と出逢えるのだろう。
「おやすみ、ミオさん」
「おやすみなさい。ワタルさん」
別れの挨拶をして、彼らは、帰るべき場所に帰っていった。
時間を見計らって私も帰ろうと腰を浮かす。
カウンターの中のゼンさんとニコさんに「帰ります」とひと声掛けると、ニコさんが出てきてくれた。
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