■VIOLET

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だけど、数歩歩いてワタルさんが私を振り向き、ヤチさんに何か告げた後また戻ってくる。 「何?どうかした?」 先を行った彼はカウンターを通り過ぎてロッカーの方へと姿を消し、ワタルさんはしゃがんで私と視線を合わせた。 「ごめんね、ほんとはもっと舐めたり同時に責めたり色々したかった」 それを伝えるのにわざわざ戻ってきてくれたのか、と合点がいく。 嬉しいなぁ。感情がそのまま表情に出たらしく、彼の顔も柔らかく微笑んで頭を撫でられた。 「彼に気遣ったんでしょ。わかってるよ。知り合いと来るっていうのもちょっと考えものだね」 「確かに。今度会ったらマンツーでしたいな。反応いい人は責めるの楽しいから」 「うん、ありがと。また会えたらね」 後頭部を撫でる手に促され、軽いキスを交わす。一期一会だから、いつ会えるかどうかも基本的にはわからない。 この場限り。それもまたスパイス。刺激的。今度は誰と出逢えるのだろう。 「おやすみ、ミオさん」 「おやすみなさい。ワタルさん」 別れの挨拶をして、彼らは、帰るべき場所に帰っていった。 時間を見計らって私も帰ろうと腰を浮かす。 カウンターの中のゼンさんとニコさんに「帰ります」とひと声掛けると、ニコさんが出てきてくれた。     
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