■INDIGO

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「そうだね、そこは注意する」 「遅くなっても私はご飯作って待ってるよ」 安心させるようににこりと笑うと、彼も微笑んで顔を近付ける。 二人して水に濡れた手。滴り落ちるそれにはた、と同時に気付いて、抱き寄せることもなく唇だけ触れ合った。 「でもあんまり遅い時は連絡するから。待ってなくてもいいよ」 言いながら私の手から布巾を取り、絞ってくれる。 「……ありがとう」 「明日の準備するね。朝はオフィス行って夕方のフライトで向かう予定」 「わかった」 私が差し出したタオルで手を拭った彼は私から離れ、隣の部屋のウォークインクローゼットへ向かった。 キッチンに残った私も手を拭き、しっかりと絞られた布巾を拡げてタオル掛けに吊るす。 なんて好都合。前回ヴィブジョーに行ったのは先週。ていうか10日程前。 そろそろまた、効果が薄れて来てしまったと思っていた所だったの。 明日いないなら行っちゃおうかな。 リビングに向かってスマホを手にした。待ち受けに設定してる結婚式の日の私達がそこに表示される。 自分史上最高に楽しかった日から1年と少し。あの時からしてみれば、たった1年でこんなことをしてるなんて誰が想像していただろうか。 普段使わないブラウザ、履歴の残らない秘密モードでヴィブジョーのHPを開き掲示板を覗いた。 男女問わず来店予告をしていて、意外に賑わいを見せる客と店との交流。 女性が書き込めば、釣られてくる男性もいるんだろうな。691(ロックワン)は割とノリのいい所だったから客層もバラつきがあったけど、女性は予想通り少なめだった。でも彼と一緒に行った場所に出入りはしたくない。 ヴィブジョーは……。帰る頃には男女共に人が増えてたし、掲示板の動きもそこそこ活発。 ひと通りの確認を済ませ、秘密モードのウインドウを閉じてアプリ履歴からも削除する。 まあ、行けば済む話。 嫌ならお喋りだけで帰ったって全然問題ない。 男女比や客層、好みに相性。その日その時どんな人と出逢うかも、全てはその場のハプニング。
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