■INDIGO

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「何飲まれます?掲示板のお礼に一杯なんでもごちそうしますよ」 「じゃあ、そこに見えてる響の21年でもいい?」 「目ざといですねぇ。飲み方は?ロック?」 「うん。お願いします。今日はゼンさんは?」 「8時から来ます。今日は掲示板も夜の予告だけだったし、平日この時間はこの通りなんで」 ボトルとグラスを手にしたニコさんを見て、軽く息をついた。 普通に浮気をしようとすれば、証拠隠しが一番厄介で面倒。連絡のやり取り。それの隠匿。必要に応じて夫に嘘をついて。 セフレでもそう。どんなに割り切った所で、固定の相手っていうのはそれだけでリスキーな存在になる。 心を求めたら、いつか泥沼。 でもセックスがしたいだけなら、こういう場所で十分事足りてしまう。 唯一の証拠は会員証か。隠し場所に気を配る必要はあるけれど、それだけなんとかすればいい。 でも私は大した小細工はしない。ショップカードや名刺を入れたカードケースに紛れてる。 それにしてもなんて便利で都合のいいシステムなんだろう。 しかも単独女性は初回以外は無料。風俗以上、浮気未満。こんなにカジュアルに楽しめちゃうなんて。 男性にしてみても同じような所かな。風俗よりは思い遣りがあって、セックスに対して積極的な女性がいる。 ちらりと隣の男性を見る。はっきりとした目鼻立ちに長い睫毛。所々茶色い髪。女性に不自由しなさそうなのに、人は見た目じゃわからない。 みんながみんな自身の欲望に従ったら、世の中の秩序は乱れていく一方。 だからあるべくしてある。ハプニングバーはきっと、そういう場所。 とは言え十分に、個人の色々は乱れているんだけどね。 「どうぞ」 「ありがとう」 出されたグラスを手にした。 隣の男性も自身のそれを取り、にこりと笑って無言でこちらに差し出してくる。 ここにいるあなたは一体誰? 「シンヤです。よろしく」 「シンヤさん。こんばんは、ミオです」 軽くグラスを合わせ、唇を付けた。癖の少ないジャパニーズウイスキー。 本当に、普通にしてたらここはただのショットバー。
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