その1

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「智子―!朝ご飯はどうするのー?」  母の声で私は目を覚ました。瞬きをすると、涙が眼尻からこぼれた。 「みーちゃん・・・」  大好きだった。大好きで大好きで、お別れしたくなかった。  みーちゃんは消えてしまった。  じゃあ、美香は?幼稚園からずっと一緒にいた美香は一体。 みーちゃんが消えてしまった事で、私が美香を作り出したの?美人で社交的で友達思いの親友として、私が作り出した?  私だったんだ・・・  みーちゃんも、田中先輩も新村君も蒲田先輩も、私が消してしまったんだ。  どうしてそんな力が私にあるのかは分からないし、わざと皆を消した訳でもない。でも、皆を消してしまった責任を感じていた。皆、何も悪いことなんてしていないのに。  立ち直るのにどれくらいの時間が掛かるのか、見当も付かない。でも大丈夫。きっと美香が慰めてくれるから。  女は男を見た。  普通の男なら、「何訳の分からない話を」と言い捨てて出て行っただろう。例え女に美香という親友がいて、1度も姿を見たことがなかったとしても、気にせずに出て行けただろう。  しかし、男は出て行くことが出来なかった。顔色を真っ青にして、女を凝視することしか出来なかった。  なぜなら、男は女のテニスサークルの先輩で、鎌田と最後にプレーをしていた人間だったからだ。  
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