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泣き疲れて時計を見ると午後10時過ぎになっていた。
私の人生において、神隠しにあったのは蒲田先輩で3人目になってしまった。
それって多いのだろうか?
私はリビングルームへとノロノロ歩いて行った。テーブルに向かって、母が家計簿をつけているところだった
「智子、少しは落ち着いた?お腹は空いてない?」
「うん、大丈夫。ねえお母さん、お母さんの知っている人で神隠しにあった人っている?」
「神隠し?どうして突然そんなこと聞くの?」
母は私の言葉に驚いたようだが、少し考えた後、目を大きく見開いて言った。
「いた、いたわよ。みーちゃん。智子覚えてない?幼稚園で仲良しだったみーちゃん」
「みーちゃん?」
「智子といつも一緒に遊んでいて、すごく仲良しだったじゃない?」
「え、幼稚園で仲良しだったのは美香じゃあ」
「みか・・・、そうそう、佐々木美香ちゃん。とても可愛らしい子だったわね~」
神隠しの話をしているのに、なぜ美香の名前を出してくるんだろう?私は不思議そうに母を見た。
「みーちゃんが家の都合で引っ越すことになった時、智子すごく寂しがってたじゃない。同じ小学校に一緒に行けないって。だから、手紙を持ってお別れを言いに行って」
母はどうしてしまったのだろう。もしかして認知症にでもなってしまったのではないか?私は心配になってきた。
「その日だったわね、みーちゃんがいなくなったの。智子が帰った後、まるで消えてしまったようにいなくなったって。みーちゃんのご両親や近所の人、警察も必死になって探したんだけどね、結局見つからなかったのよね」
私は、耳の中に蝉が沢山いるかのような耳鳴りを感じた。耳鳴りがうるさくて、何も考えられない。母の声をとても遠くに感じる。
「お母さん、私、ちょっと横になって来る」
「智子、ちょっと大丈夫なの?」
私は黙って頷きながら、リビングルームを後にした。
自分の部屋に入ると、ベッドに倒れこんだ。母の話を思い出そうとしても、頭の中がウワンウワン響いていて、上手くいかなかった。
美香は私と一緒にいた。明るくて積極的で、いつも私より先を行っていて憧れの存在だった。幼稚園の時から一番大好きで一番大切な親友。これからだって変わりはしない。
暗闇が私の視界を覆っていった。
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