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しかし、現実は違った。
「地面のうねり?え、何それ?」
新村君は怪訝そうな顔で私を見た。
「智子、帰ろうっ」
美香が机の側にやって来た。
新村君は何もなかったように、かばんを持って教室から出ていった。
「どうしたの?智子。新村君と何かあった?」
「ううん、何にもないよ。帰ろうっ」
私は美香とともに教室を出た。
帰り道、朝ほどではないけれど、落ち込んでいる美香を元気づけようと、昨夜見たバラエティー番組の事を一生懸命話し続けた。
美香と別れて家に入ると、はーっと大きなため息が出た。
何だか疲れた。
帰り道、美香を励ましてはいたけれど、頭の中では授業中の窓の外の光景が、何度も何度も繰り返し流れていた。
私は「ただ今」とだけ言って自分の部屋に向かった。
部屋に入ると、思い切りベッドに倒れこんだ。
「田中先輩、大丈夫だったのかな?」
誰かに問いかけるように呟いた。
田中先輩が消えたというのは、私の勘違いだったのかもしれない。いやでも、新村君も人が消えるのを見ていた。
田中先輩ではないとしても、人が一人消えたのは間違いないのではないのだろうか。
田中先輩以外の人・・・、いやそんなことはない、あの横顔は確かに田中先輩だった。美香に付き合って何度も田中先輩を見ていたから、間違えるはずがない。
せっかく新村君と話が出来たのに、もっと楽しい話だったら良かったのに。
ふいに、新村君の最後の言葉が思い出された。
「地面のうねり?何それ?」
新村君には見えていなかったんだ。どうしてあんな事言っちゃったんだろう?調子に乗って言わなければ良かったのに。
私の事、変な奴って思ったかな?変な事を言う奴って。
気持ち悪いとは思わないよね?いや、思われちゃったかな。
どうしよう、新村君に嫌われた。絶対に嫌われたよ!
どうしよう、どうしよう、どうしよう!
新村君に嫌われたくない。新村君を失いたくない!
ピピピピピピ
目を開けると、朝になっていた。
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