その1

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「え?」  突然新村君の名前が出てきたので、私はドキッとしてしまった。 「新村君もね、行方不明らしいよ」 「ええ?」  私は思わず椅子から立ち上がってしまった。  すぐに椅子に座りなおしたけれど、心臓がバクバクと大音量で鳴っている。新村君も行方不明ってどういう事?私が美香の目を見ると、美香は答えるように続けた。 「先生の話だと、新村君は昨日、家には1度帰ってるんだよね。でも、いなくなったんだって。靴とか財布とかは全部そのまま置いてあったらしいのね。だから、外に出かけたというよりは、神隠しにあっていなくなったみたいだよね」  新村君が神隠しだなんて、どういう事?  神隠しにあったのは田中先輩で、新村君と私はそれを見ていた方だったのに。  もしかして、田中先輩が消える瞬間を見たから?いや、でもそれだったら私も消えていないとおかしい。  なぜ?どうして? 「智子、大丈夫?」  ハッと、私は我に返った。 「あ、ごめん。新村君は後ろの席だし、神隠しとか何だか信じられなくて」 「そうだよね、近くの席の人が神隠しなんて信じられないよね。私も、田中先輩が行方不明なんて信じられないもん」  田中先輩も新村君も、何事もなく戻って来ることを祈ったけれど、2人が帰ってくることはなかった。
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