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6年後、私は大学2年生になった。
テニスのサークルに入り、それなりに充実した毎日を送っていた。サークルの1つ上の蒲田先輩に、秘かに恋をしていたのだ。
落ち着いた物腰で、いつも穏やかで、見ているだけでとても癒される人。蒲田先輩は、そんな素敵な人だったのだ。
テニスのサークルに入ったのも、蒲田先輩に勧誘されたからと言っても過言ではない。以来、近からず遠からず、適度な距離を保ちつつ、蒲田先輩を想い続けていた。
しかし、春が来て新1年生が入ってくると、私の幸せな日々は一変した。
苗村由紀、この新入生のせいだ。
いつも蒲田先輩に付きまとい、飲み物を渡したりタオルを渡したり、まるで彼女のように甲斐甲斐しく世話を焼いている。
蒲田先輩は優しいから、むげに断ることが出来ないのだ。だから、いつも困ったように微笑んで、されるがままになっている。
苗村由紀は押しが強い、このまま押され続けたら、蒲田先輩は苗村由紀に靡いてしまうかもしれない。
私は毎日、気が気ではなかった。
「智子は今日もテニス?」
授業終わりに、親友の美香が聞いてきた。美香とは相変わらずの腐れ縁だ。同じ大学の同じ学部で、サークルも同じだ。
「もちろん、美香は?」
「私はパス。今日はバイト先の今野君とデート」
確か一昨日は、どこかで知り合った水野君て人とデートだったはず。相変わらず美香はモテモテだ。
「しかし智子もマメだよね~、好きな先輩に会いたくて、ひたすらサークルに参加するなんてさ。私だったら絶対無理」
「だって・・・」
「はいはい、大好きな先輩を後輩に取られないように、見張ってないとだもんね」
「ちょっと、美香」
私の顔は、トマトのように真っ赤になってしまった。
美香の声はよく通る。周りの人に聞かれたのではないかと思うと、恥ずかしくて仕方がなかった。
「でもさ~智子、いつまで見守るだけでいるつもりなの?」
「え?いつまでって」
「指をくわえてみている間に、油揚げをトンビに取られちゃうわよ。苗村さんだっけ?あの新入生。顔はまあ普通だけど、あの積極性は得点高いわよ」
「だって、どうしていいのか分からないし」
「そんなの、好きですって言えばいいのよ」
「美香は簡単に言うけど、そんな事、恥ずかしくって言えないよ」
「しょうがないなあ、言えないのなら」
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