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美香はフフッと色っぽく笑うと、私の耳元で囁いた。
「押し倒しちゃえばいいのよ」
さらに真っ赤になる私を放置して、美香は続けた。
「口で言えないのなら、行動あるのみ。大丈夫よ、蒲田先輩は美香に気があるから、きっと喜ぶわよ」
「そ、そんな事、あるわけないじゃない」
「フフッ、分かるのよね~。目を見れば、その人が誰を好きなのか。智子はさ、自分で思っているよりもずっとイケているんだから、自信を持った方がいいよ。他にも智子を狙っている人いるしさ」
「な、な・・・」
「じゃあ、頑張ってね。お先」
そう言うと、半分パニックに陥っている私を残して、美香は教室を出て行った。
元々美人で社交的な美香は、大学に入ってますますオシャレに磨きをかけ、デートで忙しい日々を送っている。
私と違って輝いていて、自信に満ち溢れている。私の自慢の、大切な親友だ。
・・・美香の言うことは正しい。
さすがに押し倒すのはどうかと思うけど、好きですと伝えなければ、蒲田先輩との距離が縮まることはない。いつまでも今のまま。いや、へたをしたら苗村由紀に蒲田先輩を取られてしまう。
「蒲田先輩は美香に気があるから」と美香は言った。私に気を遣ってウソをつくようなタイプではない。
信じてもいいの?美香。私、蒲田先輩に告白してもいいの?
その日は珍しく参加人数が少なく、蒲田先
輩が別の先輩と試合形式の練習をしているコートの周りには、苗村由紀とその友人しかいなかった。
美香の言葉が後押しをしてくれ、近くで蒲田先輩のプレーを見ることにした。
苗村由紀の側を通った時
「私、蒲田先輩に告白したの」
という言葉が耳に入って来た。
えっ!告白?
苗村由紀が蒲田先輩に!
一瞬心臓が止まってしまったかと思ったけれど、次の瞬間、心臓がバクバクと激しく拍動し始めた。
そんな、私が何もしないで見ているだけだったから。私が早く告白しなかったから、苗村由紀に先を越されてしまった。
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