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優しい綾人の声に思わず顔を上げ綾人を見ると、昨夜のひどく雄臭かった彼の姿は欠片もなく、いつもの綺麗で清廉なイメージそのものの綾人が其処に居た。
(も……もしかして、夢でも見たのか……?)
陽也を押さえつけて一晩中貫き続けたことが信じられないほどに朝陽に照らされた綾人は神々しく天使のように清らかで。
「あ……大丈夫。飲めるよ」
昨日は何があったかなんて、こんな清らかな綾人に聞けるはずなんかなくて。
ひと口オレンジジュースを口に含むと甘酸っぱい爽やかなオレンジの香りと味が広がった。
「おいし……」
思わず陽也が言うと、綾人は華が咲いたように笑った。
「さっき僕が絞ったんだ、それ」
「え?綾人が?」
「そう。朝食にパンケーキも焼いてきてあげるよ」
いつもどおりの、優しくてすごく気の利く綾人。
「あのさ……あの……綾人……」
「ん?パンケーキ嫌いなわけじゃないよな?」
「あ、うん……」
「よかった。実は自信持って作れるのはパンケーキだけでさ。朝食のあとは陽也が観たがってた映画部屋で一緒に観よう?」
クスクス笑う綾人の笑顔はキラキラ眩しくて、陽也はそっと目を細めて、それからグラスのオレンジジュースを飲み干した。
昨日、何かあったかどうかなんて、やっぱり聞けるわけがない。
(俺、頭おかしくなっちゃったのかな……それとも……)
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