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クスクス笑う声までが綾人は美しい。甘い吐息が掠めるほどの距離。彼を感じる陽也の耳も目も鼻も蕩けてしまいそうだ。先程までたくさんいた取り巻き達をどう煙に巻くのかわからないが、気が付くと綾人はするり、と陽也の隣にやってくる。
「この前ハルが勧めてくれたのも、凄く面白かった。図書室の司書よりハルに聞くのが一番だな」
そう言って色素の薄い瞳に覗き込まれると、陽也の思考回路はぐずぐずになってしまう。
「それは……司書の先生より俺の方が綾人の好みわかってるってだけで……」
瞳を見返すことが出来なくて俯きがちに答える。
綾人の長くて美しい指先が、陽也の長い前髪をそっと退けながら
「ハルは僕の好みばっちり把握してくれてるからね」
と微笑んだ。綾人の長い睫毛が笑うと揺れてとても綺麗な影を作り出すのを陽也は溜め息を吐いて見つめてしまう。
それから暫しの間二人は本の話や映画の話を楽しんだ。
楽しい時間はあっという間に過ぎてしまい厳かな鐘の音が昼休みがあと五分で終わると告げている。
「もうちょっとハルと話していたいな。少しだけ遅れて行かないか?」
名残惜しそうな綾人の声を嬉しく思いながらも。
「奨学生の身分でサボりなんて出来ないよ」
と言って陽也は膝の上の本を閉じた。
二人でそっと礼拝堂のベンチから立ち上がる。歩きながらさらりと薄茶色の髪を揺らして綾人は陽也を覗き込んだ。
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