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天使の分け前
初めて綾人を見たとき、陽也は天使が居るのかと、思った。光の加減によって鮮やかな彩りを見せるステンドグラスが煌めく礼拝堂の中。高い位置にある小さな天窓から差し込む一筋の光に照されて祈りを捧げるその姿はとても敬虔なものであった。祈りを終え、すっと立ち上がると背まで伸ばされたさらりと美しい髪が揺れた。光の当たり具合によってはブロンドに見える淡い髪色。立ち上がると天使と言えども大天使かと思うくらいには背が高かったが、それを以てしても男か女か区別がつかないほどの中性的な美貌の持主であった。先程祈りを捧げていた美しいバリトンを聞いていなければその美しい男の性別など解りはしなかっただろう。呆然と清らかな大天使を見つめる陽也は振り返ったその美しすぎる彩の瞳の視線に射止められて、一歩も動くことが出来なくなった。
「君も祈りに?」
凛として冱え冱えと澄みわたる空気の中、美しい男が陽也に問うた。早朝の誰も居ない礼拝堂の隅で読書をしに来ただけであった陽也だが美しい男から視線が離せず、問いにも答えられずに只管に男を見つめていた。
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