235人が本棚に入れています
本棚に追加
/164ページ
「わかったわかった。あーあ、いつまで経っても白の字には敵わないな。ねえ、コウちゃん」
「私は陽心に負けたことなどない。あとコウちゃんと呼ぶな」
興信が不満げな声を出した。残念そうに碧泊がいう。
「ああ、負けたことに気づいてないんだ……」
「貴様何を言うかっ」
精霊が碧泊の首に巻きつく。
「うぐっ」
「座って」
精霊は、碧泊の首をギリギリと締め上げた。
「す……座るからっ、やめ、死ぬ……っ」
やがて、碧泊はがくりとこうべを垂れた。興信はため息をつき、
「全く世話の焼ける」
魂を飛ばしている碧泊を、ずるずる引きずっていく。にぎやかな三老だ。陽心はこちらを見て、すっ、と何かを差し出した。真桜は、差し出されたものに視線を落とす。
「……これは」
「薬木の根っこ。噛むと吐き気が収まる」
「ありがとうございます」
陽心は笑みを浮かべ、興信たちと共に歩いて行った。これで白、青、黄家は揃った。あとは緋家だが……。
「真桜さま、休んでください」
月桃が椅子を指して言う。
「いや、五大家への挨拶が済んでいないから」
「立ちっぱなしではお身体に触ります」
さあさあと勧められて、真桜は腰掛けた。月桃が水を差し出して来る。
「お水を飲まれますか」
「ありがとう」
最初のコメントを投稿しよう!