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「なるほど、秘伝書を使うとこーいう石頭ができるのか~うおっ」
興信が精霊を飛ばす。碧泊はそれを阻んでいた。なぜ、碧泊はわざわざ興信を怒らせるようなことを言うのだろう。二人ともかなりの歳だろうに、まるで少年のようだ。そんな二人を遠巻きに眺めているのは、白陽心だった。
「仲良き事は、美しい」
「白老師がしゃべった……!」
月桃が目を剥く。驚くのはそこなのだろうか、と真桜は思う。
「仲などよくないわっ!」
興信が真っ赤になって叫ぶ。真桜は、彼の血管が切れてしまわないかと不安になった。
「白老師、お二人を止めてください」
白は何も言わずに、精霊箱を取り出した。
「白水、止めて」
にゅるん、と飛び出した蛇のような精霊が、巻きついた。碧泊の精霊に巻きついた。
「!」
碧泊が目を見開く。
「やぐらに当たる」
淡々という陽心に、月桃は驚いている。
「す、すごい。碧泊さまの精霊を一瞬で止めるなんて」
「喧嘩の仲裁をするのはもっとも力量のあるものだと言うが……」
真桜は感心する。碧泊を先に阻んだのは、諍いの原因が彼だからだろう。案の定、敵を失った興信の精霊は、うろうろと遊回している。さすが二人と付き合いが長いだけはあった。
「座って」
陽心が静かに言う。
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