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「白羽の矢か……種馬みてえだな」
「ああ、春海も、私と似たようなものだ、と思った」
恋愛感情はなくとも、慈しみあえればいい。そう思っていた。だが、恐らく真桜のその考えが春海の気にさわったのだ。──俺とおまえは違う。それを今から証明してやる。彼はそう言わんばかりに、手酷く真桜を抱いた。声を出せば髪を強く引っ張り、嘲笑い、罵った。彼の矜持を守るには、恐らくそうするしかなかったのだ。真桜は、腕の入れ墨に目を落とす。蒼華は眉を顰めている。
「俺は、そいつにまるで同情できねえんだがな」
「蒼華には、きっとわからない」
「……ああ、わからねえ」
彼は、真桜のほおを撫でた。
「おまえを傷つけるやつは、全員許せねえ」
真桜は、その手をそっと掴んだ。
「もう、寝よう」
「寝台に来な」
「私は、ここでいい。蒼桜が……」
「マオ」
来てくれ。真剣な口調で言われ、鼓動が鳴り出した。求められるのがこんなに嬉しいなんて知らなかった。蒼華に手を引かれ、真桜は寝台へと向かう。寝台に横たわり彼に背を向けたら、蒼華が覆いかぶさってくる。ぎしり、と寝台が鳴った。
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