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後ろから腕がまわってきて、優しく真桜を抱きしめた。唇が耳の裏に触れると、鼓動が高鳴って、顔が熱くなる。 彼は真桜の首筋に顔を寄せた。
「いい匂いだ。花みたいで……これは、蜜の匂いか?」
「蒼華、う」
大きな手が、真桜の顎を掬い上げた。ゆっくり顔が近づいてきて、唇が合わさる。
舌が絡まると、頭の中がぼんやりした。唇を離した蒼華は、真桜の表情を見て目を細めた。
「口づけが好きか?」
「ああ……好きだ」
「そうか。俺もだ。おまえとするのが特に」
嘘だ。きっと、この自由な男は唇も自由だから、いろんな女に口づけているに決まってる。
「ふ」
蒼華の手が、着物の中に滑り込んで来る。彼は肌の上に手のひらを滑らせ、
「おまえの肌、すごいすべすべ」
「眠る、のではないのか」
「眠れやしねえよ。好きなやつと一緒なんだ」
彼はいたずらっぽく言って、真桜の首筋を舐めた。それだけで背中が震える。身体中が心臓になったようだった。なあ、真桜。青華がつぶやく。
「熊の交尾、見たことあるか?」
真桜は首を振った。
「俺はある。熊は、子連れの雌に出会うと、その子を殺すんだ」
蒼華は真桜の耳たぶを噛んだ。真桜は身をすくめ、吐息を漏らす。
「どうして……」
「子供がほしいから。子供を殺された雌は、子孫を残すために襲って来た雄と交尾せざるを得ない」
「残酷、なのだな」
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