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街桜
翌朝目覚めると、春海はすでにいなかった。いつものことだ。最中に飽きて、途中で出て行かれたこともある。ひどい扱いをされないだけ、マシというもの。
真桜は寝台から起き上がり、乱れた寝具を直した。胎内が熱く、腫れているのがわかる。打擲された尻もじんじんと痛んだ。春海とまぐわうと、翌日熱っぽくなる。真桜はすこしふらつきながら、着替えを終えた。部屋を出ると、控えていた月桃が頭を下げる。
「おはようございます、真桜さま」
「おはよう」
彼はくん、と鼻を鳴らし、眉を寄せた。
「……春海さまがお越しだったようですね」
精の匂いがしたのだろう。真桜は羞恥に目尻を赤くする。
「ああ。来ないと言ってたんだが」
「勝手な男め」
月桃は苦い口調で言い、
「お身体は大丈夫ですか」
「大丈夫だ。珍しく噛まれただけだった」
真桜は、自分の首筋を撫でた。アルファが交接の際、相手を噛むのは普通のことだ。尻を叩かれたことを口にするのは憚られた。
「どうせまたてひどい真似をするに決まっている。いっそ、あの男のモノを切り取って、術を使えなくしてやりたい。子供はどこかから適当に見繕ってくればいいし」
「月桃……冗談に聞こえないが」
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