5人が本棚に入れています
本棚に追加
僕は長く仮面を被り続けてきた。誰も僕の事を疑わなかった。しかし、それは一人だけでは抱えきれない荷物だった。荷物を持ってくれる存在があったから、僕はこの三年を乗り越える事が出来た。
そう考えて、自分の戦いは終わりのないものなんだと思った。
この三年は乗り越えられた。でも、次の三年は。それから先は。
考え出すと不安なんて止まらない。自分はどうなっていくのか。
「なんかあったらいつでも頼れよ」
「ん?」
「俺は、変わらねえから」
感謝すべき言葉だ。昔、雅人のこの言葉に救われた。救われ続けた。
でもその言葉が今、何より痛い。
「……ごめん」
そう思うと自然に言葉が零れた。
「何謝ってんだよ、急に」
だって、僕はその言葉を今から裏切るから。
仮面は一枚で済むはずだった。なのにいつしか、もう一枚仮面が必要になった。
雅人の為だけの仮面が。
「ごめん」
自分が今から言う事は、雅人と僕とのルールを犯すものだ。彼を裏切る言葉だ。
それでも、もうこの気持ちに我慢は出来なかった。
「私、雅人が好きだ」
この三年、被り続けてきた仮面。
外した先に、雅人はまだいてくれるだろうか。
*
最初のコメントを投稿しよう!