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「水分はもともと梅干しの中に含まれたものがあるから問題ない。これで内部爆破を起こす事ができる。まあその爆破は小規模のものかもしれない。それでも隕石の重心を傾ける事さえできれば、必然的にコースが変わり、地球をかすめて通過していく。これで救われる」
「な、なるほどねー。そ、そっかー」
「そ、それじゃあ俺たち頑張らないとなー。や、やるぞー」
空々しい表情とたどたどしい口調で言うふたり。
絶対こいつらわかってない。何を説明されたか、まるで理解していない。
ただ、ここであえてツッコミを入れるような面倒な事はしない。ナターシャとしては、ちゃんとやってくれれば文句はない。
「よっしゃ、とにかくもうやっちゃえばいいのね」
「ええ、頼むわ」
腕まくりをした菜穂子が両手を梅干しの山に向けて突き出した。
軽く息を吐き精神を整え、そして--叫ぶ。
「ふにゃっぱっ!」
奇声が荒野の砂漠に響き渡る。
声は風に乗ってどこまでもどこまでも広がり--そのまま消え失せる。
「あれ?」
何も変わってはいなかった。ただタンプルウィードがころころと前を通り過ぎていく。
「……ちょっと、菜穂子さん」
「待って待って! もっかいもっかい!」
ジト目のナターシャに、冷や汗を浮かべて菜穂子が再度超能力の発動を試みる。
だが、結果は同じ。
いや、今度はタンプルウィードが2つ転がっていった。
「あんたどういう事よ! 今さらできませんでしたで済む話じゃないのわかってる!?」
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