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「ふにゃっぱっ!」
視線の先でひとりの少女がテーブルに置かれた2個のおにぎりに向かって、奇声を飛ばしている。
今度はその隣の座る少年の番だ。
「どですかでんででんっ!」
同じように奇声をおにぎりに放つ。
少女は片方のおにぎりを手に取り、ツナマヨと書かれた包装をはがし、二つに割る。
中には"梅干し"が入っていた。
少年がその梅干しをつまんで口に運ぶ。
強烈な酸っぱさのせいか、顔が歪む。
「いえーい!」「せいこーう!」
ふたりがハイタッチを交わす。実に満足そうだ。
「働かずに食う飯は旨い?」
ナターシャの台詞は皮肉に満ち溢れていた。
こんなものを目の前で見せられれば、これぐらい言っても許されるはずだ。
というか、言わずにはいられない。
「なによ、ナターシャ。見ての通り働いてますけど何か?」
包装に「梅干し」と書かれたもう片方のおにぎりを食べながら答える少女--菜穂子。
その中身はツナマヨ。
「旨くはないな。実は酸っぱいものは苦手なんだよな、俺」
まあでもいい塩梅だとつぶやく少年--直哉。
このふたりが何者かというと--藁だ。
それも千切れ、腐れ切って、なんの役にも立たない藁。
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