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『消えないでっ!いかないでっ!』
おばあちゃんに手を伸ばしました。
けれど、その手は、届かなくて。
『…キャロル、私の可愛い子。
どうか貴方に、数多の祝福があります様に』
そう言った、おばあちゃんの笑顔を最後に、
目の前が、真っ暗になりました。
目が覚めるとそこは、ベッドの上でした。
のそりと起き上がり、周りを見ます。
そこにあったのは、草や、液体や、よく分からない物が沢山。
「…起きたか」
と、不意に声が聞こえました。
声のした方に、顔を向けます。
そこにいたのは、二つのマグカップを持ち、黒いフードを深く被った誰か。
その姿はまるで、…まるで、
「……!」
ぼーっとしていた頭が、その姿を見ただけで、はっきりとしました。
その姿は、まるで、
…昔、お母さんが読んでくれた絵本の、悪い魔女さんの様で。
よく見れば周りにある物も、悪い魔女さんが持っている物にしか見えません。
私は掛け布団に身を包みました。
その黒い誰かから、身を守る様に。
「…そんなに怯えなくても、取って食いやしないさ」
黒い誰かはくくくと笑って、私に陶器で出来たマグカップの内の一つを差し出します。
「飲むと良い。身体が温まる」
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