Carol af flammen.

2/19
前へ
/19ページ
次へ
『消えないでっ!いかないでっ!』  おばあちゃんに手を伸ばしました。  けれど、その手は、届かなくて。 『…キャロル、私の可愛い子。  どうか貴方に、数多の祝福があります様に』  そう言った、おばあちゃんの笑顔を最後に、  目の前が、真っ暗になりました。  目が覚めるとそこは、ベッドの上でした。  のそりと起き上がり、周りを見ます。  そこにあったのは、草や、液体や、よく分からない物が沢山。 「…起きたか」  と、不意に声が聞こえました。  声のした方に、顔を向けます。  そこにいたのは、二つのマグカップを持ち、黒いフードを深く被った誰か。  その姿はまるで、…まるで、 「……!」  ぼーっとしていた頭が、その姿を見ただけで、はっきりとしました。  その姿は、まるで、  …昔、お母さんが読んでくれた絵本の、悪い魔女さんの様で。  よく見れば周りにある物も、悪い魔女さんが持っている物にしか見えません。  私は掛け布団に身を包みました。  その黒い誰かから、身を守る様に。 「…そんなに怯えなくても、取って食いやしないさ」  黒い誰かはくくくと笑って、私に陶器で出来たマグカップの内の一つを差し出します。 「飲むと良い。身体が温まる」     
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加